JR東海は生き残れるか

2015年9月20日 (日)

福井義高の講演を聞いてみた(質疑応答編②)

2015/03/01 慶応大学グローバルビジネスフォーラム(4) 名取幸和講師編
http://m.youtube.com/watch?v=f0Big-pcEvY

1:35:40~
名取:鉄道貨物は1人当たりの輸送量が内航海運ほどではないにせよ多い。最近ではトラック運転手の成り手が少なくなっているがそれでも鉄道貨物は全廃すべきなのか、福井先生と話したい(註:これは是非聞きたい。鉄道貨物全廃論の弱点を突くことになるか?)

1:44:00~
問:日本は大きな輸出の目玉がない中、安倍―葛西ラインでリニアを売り込もうとしているのではないか?
フォロー(福井):日経では前向きとしているが、日経は会社の広報部が書いた通りに書くだけ。JR東海はリニアだって本気じゃない。

《もしみんな本気なら株価は0円になっている。》

株価が4兆円あるということはみんな作らないと思っている、ということ

以上で追記を終わります。

…だれた。

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2015年9月19日 (土)

福井義高の講演を聞いてみた(質疑応答編①)

2015/03/02 Forum(4) 福井義高講師(青山学院大学国際マネジメント研究科教授)「鉄道は生き残れるか ある公共事業の半世紀」
http://m.youtube.com/watch?v=lxWhbgX0lC0

1:20:00~1:30:00
問:なぜ日本の大都市にはヨーロッパのように路面電車がないのか?
答:ヨーロッパで路面電車のある都市は日本で言えばフランクフルトといえど鹿児島・長崎並みの人口。ロンドン・パリでは東京同様路面電車では捌ききれない

問:なぜ日本とヨーロッパで高速鉄道の運賃に差が生じるのか?
答:イギリスは私同様鉄道には冷たいがフランスは税金を入れるなど手厚い。
日本の場合は特急料金が高すぎる。国鉄時代運賃を抑えざるを得なかった(前記事1:00:00~1:10:00)から特急料金を多めに取った名残が残っている。こんなバカなことをやっているのは日本だけ

問:鉄道の優等生スイスは大都市圈輸送がないと考えていいか?
答:スイスに50万人以上の都市はなくジュネーブも青森以下。中長距離輸送を国鉄で運べるので営業成績はいい

(橋山禮治郎教授から「TGVは運賃料金が安い」との指摘)

問:運賃体系を変えれば少しは鉄道も復権するのではないか?
答:鉄道は価格弾力性が驚くほど低いので運賃を下げれば損するだけ。値下げで客が増えるなら運賃規制は要らない
TGVは日本の飛行機と同様オーバーキャパシティだから価格政策を取りやすい。東海道新幹線は価格政策を取れない、やろうとしてもかなり難しい

1:30:00~1:40:00
問:ローカル線を廃止するとして通学需要をどう捉えるか?
答:今やローカル線の使命は通学輸送。あるJR関係者「やめさせてくれるならバスの定期代を出す」運行すればするほど損、補助金を出してもやめたい
「バスは遅い」と言うが今のローカル線はバスよりも若干遅い。10~15kmなら10~15分違うくらい
「鉄道は雪に強い」というのはウソ。使命感から採算度外視で雪かきをしている

ある銀行(転載者註:福井教授が監査役をしていたりそなHD)のコールセンターを地方の駅前に作ったら全員車通勤している。ローカル線は今や大人は乗らない

新幹線に関しては広島~東京~仙台間以外はランニングコストが賄えるかどうか

問(橋山):日本は大都市の人口コントロールがうまくいっていない。ヨーロッパが管理できているのはLRTの整備を急速に推進しているからではないか?
答:LRTの輸送量は大した事はない。

《LRTはヨーロッパ人の自己満足だと思う。》

この点は橋山先生と見解が違う

問:バリアフリーの観点からのLRTの活用をどう思うか?
答:《バスでは駄目なのか?》(転載者註:口調こそですます調だったが、本当に開口一番こう言った)
LRTとバスでは輸送量は殆ど変わらない。「LRTの方が介護が楽」というなら介護が楽なバスを作ればいい

問:寝台列車の廃止が相次いでいるが、新幹線も寝台列車の二の舞を踏むと考えるか?
答:就業人口が減っている以上新幹線の利用者も減る。一番減るのは北東北と南九州と言われている。新幹線が開業したばかりだが、

《いずれ新幹線は産業廃棄物になると思う。》

ランニングコストも出ない

問:ローカル線廃止に当たっての障害は何か?
答:地元の反対。本気なのか見返りを釣り上げるための作戦なのかは分からない。しかしJR関係者は「そのような議論は怪しからん」と言う

1:40:00~1:50:00
問:通勤定期はいくらまでが適切か?(転載者は質問の意図が理解できず)
答:新幹線通勤を許している会社は基本的にない。
橋山先生からの指摘と関連するが新幹線通勤を許していること、定期代が自己負担でないことは都市の肥大化にかなり影響を与えている。どこに住んでもいいから

問:ローカル線をJRはどうしたいのか?
答:私は(古巣の)東日本を最近出入り禁止になったのでよく分からない。西日本は経営基盤が弱い分廃止には真剣(転載者は講演冒頭の"JR東日本から睨まれる私"は冗談か針小棒大だと思っていたが、そうでもないかなくなってきたのかもしれない、と考えを改めた)

問:新幹線は高すぎる。高速バスや飛行機などライバルの進化に対抗するための更なるサービスについてはどう考えるか?
答:上場したので収益構造を大幅に変える施策はできない。東海道新幹線は上場前に東京~新大阪間を10,000円にしておくべきだったが、今の運賃料金を前提とした株価になっているのでできない

問:海外への新幹線輸出について外国勢に対し、日本の勝ち目はどの程度か?
答:鉄道は自動車や飛行機と違いすごく利口な人は必要ないが、真面目に働く人には必要。
発展途上国は真面目に働く人の層が少ないし、高速鉄道のメンテナンスも出来ない。貨物やバンコクのような大都市圈輸送ならいいが長距離輸送は向かない。

《高速鉄道は途上国には重荷になる。途上国への高速鉄道輸出は人道上の視点からみて問題ではないかと思う》

問:東海道新幹線は値下げすれば利用者も収益も増えるのではないか?
答:鉄道はどう計算しても価格弾力性が1を下回る。利用者が増えても収入減になる。東京~新大阪間で13,000円を10,000円にしても利用者は飛行機からのシフトで1割増えるが収入は1割(?)減る。代替手段が多い所(大都市圈)でも同様
(質問者から何度かエビデンス(根拠)が必要だとの発言があったが、転載者もぜひ見たいものである)

以上で終わります。

…長げぇ。

(09/20追記)
他の講師の質疑応答から福井語録を拾ってみました。

2015/03/01 慶応大学グローバルビジネスフォーラム(4) 橋山禮治郎講師編
http://m.youtube.com/watch?v=ytp-wNxkDMw

1:56:30~
問:リニアは失敗すると言うが、東北新幹線の時もそう言われたのでは?東北新幹線は成功している
フォロー(福井):東北・上越新幹線いずれも赤字。分割時に時価会計で大幅な減損をしてツケを東海道新幹線に払わせた。両新幹線の建設が国鉄破綻の大きな原因のひとつ

問:東北・東海道新幹線を繋げればよいのでは?
貨物は新幹線では輸送していないのでは?
答(橋山):東北・東海道の結節は物理的ではなくJR各社の経営姿勢が問題だと思う。
リニアでは駄目だが新幹線ではJR各社が貨物用の新幹線車両を非常時の備えとして持っておくのがよいのではないか
(註:ここで福井教授から異論が出るかと思ったが出なかった)

あと少しですが、別記事にします。

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2015年9月18日 (金)

福井義高の講演を聞いてみた(講演編)

You tubeでこんな動画

2015/03/02 Forum(4) 福井義高講師(青山学院大学国際マネジメント研究科教授)「鉄道は生き残れるか ある公共事業の半世紀」
http://m.youtube.com/watch?v=lxWhbgX0lC0

を見つけて聞いてみました。1時間54分のうちの50分だけ。当方はフィーチャーフォンしか持っていないのでそれ以上視聴できんのです。と思ってましたが、ガラケーでもそれ以降が聞けました。
今回はメモ書きをそのまま載せます。まあ、いつも通りの当ブログということです。(「鉄道は生き残れるか」は2012年8月出版)

0:00~10:00
・JR東海に睨まれる橋山(禮治郎)さんとJR東日本に睨まれる私を呼ぶとは慶応は凄いところ(転載者註:福井義高教授はJR東日本出身)
・旅客輸送は人口集積に、貨物輸送は地理条件に影響を受ける
・交通手段は赤字でもいいが、鉄道である必要はない
・日本においては鉄道貨物は止めるのがいい選択肢
・鉄道旅客輸送量では日本>G7の残り(米英仏独伊加)

10:00~20:00
・輸送量シェアからみれば鉄道貨物は日本経済にとってどうでもいい存在、百年に一度の大地震の時には役に立つかもしれないが
・鉄道関係者は鉄道天動説でものを考えている―なぜ「飛行機では駄目なのか」は説明しない
・かつてのように鉄道省、国と一体だったら無駄な投資(ローカル線・貨物)はなかった。国鉄という国と別の法人にしたから無駄が止まらなかった
・石油ショック後の無責任な環境重視論が日本の鉄道のモータリーゼーションへの対応を遅らせた(転載者註:「今も遅らせている」と主張したいのか?)
・大手私鉄15社で日本の鉄道旅客輸送量のシェアの25%を占める

20:00~30:00
・国鉄改革で需要は掘り起こされた(多少は国鉄全盛期近くに戻った)
・鉄道はしょうがないから利用されているだけ
・"福井は出世できなかったから僻んでいる"とJR東日本関係者は見ている
・三島会社が国鉄改革時の輸送量を維持しているのは奇跡的なこと。国鉄改革時には誰も想定していなかった
・JR北海道はダメだと思われていたが成功した。成功していたから誰も問題点を言い出せなかった
・JR東海の経営者になった人はラッキーだった
・世界で一番混んでいるのは東急

30:00~40:00
・JR東海は新幹線しかないから他の路線に一人も客が乗ってなくても黒字になる
・地元は三陸鉄道を復旧して欲しかったのか?(福井教授の感想)
・幹線並みに輸送量が回復した地方交通線(八高線・東金線など)がそのままなのに乗客が文句を言わないのが不思議

40:00~50:00
・台風で流された路線(高千穂鉄道)は廃止されるのに、地震で壊れた路線は廃止されないのをどう合理的に説明すればいいのか私の頭では分からない。大人の世界ではそういうことになっているのだろう
・"新函館"駅は詐欺。距離的に言えば大宮駅を"新東京"駅と言うようなもの
・東海道新幹線を推進していた人はその後の新幹線の建設に懐疑的になった。東海道新幹線に懐疑的だった人はその後の新幹線の建設に積極的になった
・安全といえば飛行機も安全。大量輸送の必要があるかが新幹線との境目

50:00~1:00:00
・東海道新幹線品川駅に関しては時間にうるさい(10分差を気にする)人を取り込んだ点は評価できる
・世界で最も利用者の多い羽田~新千歳間は1日3万人、殆どの地域は新幹線を建設するなら羽田を拡張整備した方がよい
・東京から離れるにつれて乗客が減るJR東日本の新幹線と違い、東海道新幹線は名古屋からでも乗客が乗る
・北海道新幹線ができてもスピードでは飛行機、安さではLCCに敵わない。乗るのは鉄道マニアくらい
・鉄道の議論はマニアが支配しているので鉄道しか見ない

1:00:00~1:10:00
・青函トンネルはやればやるほど赤字。「費用便益計算でプラス」とはどういう計算をしているのか
・瀬戸大橋も投資コストの回収は不可能だが、青函トンネルと違い都市間の結合に寄与したので「まあいいかな」
・鉄道貨物は貨物の将来を真剣に考えていた人ほど全廃を主張していた
・国鉄改革でJR貨物が旅客会社に払う線路使用料は政府の施策で200億円に抑えられているが、本来は500億円もらう必要があり差額は補助で穴埋めしている。国交省はJR貨物を生かさず殺さずにしている
・私鉄とは違い国鉄の運賃は国会、特に社会党が値上げにうるさいため何の根拠もなく決められてきた
・JR本社三社からの新幹線買い取り代金は国債償還に充てるのが筋
・新幹線は地方が「工事がしたい、文句があるか」という手段と化している
・新幹線の建設を山陽で止める
ローカル線を建設せずに輸送密度の低い既存線も廃止する
貨物を廃止する
という施策を行っていれば国鉄は分割せずとも独立採算に近い形で維持できた

1:10:00~1:20:00
・ヨーロッパの鉄道の優等生スイス国鉄は貨物は赤字のはず、全体ではギリギリ黒字(運営費が出る程度)。JR九州に近い形態
・JR北海道は札幌周辺の高密度輸送で会社を維持できている
・JR北海道再生案として現在の営業区間2500kmを

札幌周辺を中心にした900km(輸送量の殆どを担う、経営安定基金を引き継がない)
残り1600km(経営安定基金を引き継ぐ)

に分ける。前者は独立採算にできる可能性がある。後者は存廃を道民が判断する
・デフレ下なら運賃を上げずとも実質値上げになるので本社三社はラッキーだった
・アベノミクスが成功する、つまりインフレが来たらJRは一発で破滅

・JR20,000kmのうち10,000kmは廃止すべき
・公共性を持ち出した鉄道擁護論はせず、鉄道は自動車と飛行機のすき間で細々とやらせて欲しい

以上で講演は終わり、質疑応答に移ります。
この記事もガラケーから編集できなくなりそうなので次の記事に移ります。

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2015年6月26日 (金)

東海道新幹線は絶好調です…か?

(2014/07/09記事アップ)
人口減少時代に突入している中、東海道新幹線といえども利用客の減少傾向からは逃れられない、との指摘が"だから輸送力増強を目的とするリニア中央新幹線の建設は不要だ"とする一派からなされています。もっとも、JR東海はリニア中央新幹線の建設目的から「輸送力増強」を外したようですが。主に座席利用率の低下傾向から利用客は回復していない、と見なしているようですが、意外と2012年度・2013年度のデータを載せているサイトがないようです。
そこで、当ブログがJR東海の有価証券報告書等から東海道新幹線のデータを収集しました。
(07/16追記)
閏年を考慮していなかったため、03年度・07年度・11年度の旅客輸送密度の計算をやり直しました。
(2015/06/26追記)
2014年度のデータと、一部文章を追加しました。

座席利用率(%) 旅客輸送人員(百万人) 旅客輸送人キロ(億人キロ・百万人キロ) 旅客輸送密度(人) 輸送収入(億円) 旅客1人当たり支払い金額(円)

03年度 66.2 132 403(403.40) 199,454 9,576 7,243
04年度 64.3 137 416(415.66) 206,079 9,813 7,186
05年度 62.6 144 438(437.77) 217,041 10,304 7,180
06年度 63.2 145 445(444.87) 220,561 10,431 7,180
07年度 64.7 151 465(465.40) 230,109 10,857 7,174
08年度 61.2 149 460(460.44) 228,280 10,641 7,134
09年度 55.6 138 427(426.85) 211,627 9,736 7,053
10年度 58.0 141 437(437.41) 216,862 9,996 7,089
11年度 59.1 143 443(443.03) 219,048 10,110 7,070
12年度 62.2 149 469(469.30) 232,673 10,697 7,168
13年度 63.5 155 489(488.73) 242,306 11,139 7,194
14年度 63.6 157 501(501.34) 248,558 11,435 7,266

これを見ると、座席利用率は一度も03年度の水準に回復していません。
しかし、他の指標は旅客1人当たり支払い金額をのぞけば13年度が最高、支払い金額も13年度は03年度に次ぐ2位になっています。
そして14年度は、座席利用率以外の指標が過去最高になりました。

「従って、"東海道新幹線といえども利用客の減少傾向からは逃れられない"との指摘は現実から外れている」と言えない、正確には言い続けられないのが東海道新幹線が立ち向かう最大の問題と言えます。
ここ2、3年で利用客の低下傾向を脱したのは厳然たる事実として認めざるを得ないでしょう。そして、今まっただ中の人口減少時代を脱出する術がない(か、機能していない)のも厳然たる事実です。

ですから、「東海道新幹線の利用は再び増加傾向に転じたが、日本の人口減少傾向を受けいずれは本格的な減少傾向に突入する。その転換点は恐らく各所で想定されたよりは先送りに成功しているが、いつ迎えるか、減少に転じたとしてどの程度のペースで減っていくのかは大いに再考すべきだ」
というのが今回の結論です。

なお上記の結論は、2015年6月時点では変更の必要性は全くないものと認識します。

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2014年9月 4日 (木)

柘植は白象を冨田と真鍋に贈った!

当ブログ主は高校の授業で"white elephant"なるものを知りました。昔タイでは白い象が神聖なものとされており丁重に扱われました。これを利用し、国王が政敵に白い象を贈ると送られた側は無下に扱う訳にもいかず象の維持費で財を費やし、ついには底をついたという故事からwhite elephantは「無用の長物、維持費がかかってもて余すもの」との意味に使われます。

さて、柘植・冨田・真鍋といえばそれぞれJR東海・東日本・西日本の社長の名字ですが、東海から他の本州JR会社に贈る"白象"とは何か?
それがジャパンレールパス(以下JRパス)利用の海外客です。
JRパスの収益がJR各社にどのように配分されるかは分かりませんが、当ブログでは一つ試算をしてみました。他人の算盤で銭勘定、いや、批判している相手の算盤で銭勘定したからどうオチをつけたものやら。

free rider:(synonym)Japan
rail pass user "What's your problem?"
http://app.f.m-cocolog.jp/t/typecast/1525029/1537329/94121989

JRパスはJR各社にとって同じ略称を持ってはいても余りありがたくないまさに白象のような存在、って言いたいん?と理解して頂いたところで説明しましょう。どうやってJR東海から余所へ贈るか?

JRパスを現在ののぞみ・みずほ利用禁止から、みずほ及び東海道新幹線の全列車利用禁止に変えてしまうのです。

ひかりにもこだまにも乗れなくなったJRパス利用者が首都圏から名古屋・京阪神に鉄道で移動する場合どうするか?名古屋までならあずさとしなのを乗り継ぐ方法もあるでしょうが、京阪神に行くなら北陸路を通るのがこれからのセオリーとなるでしょう。
そう、北陸新幹線開業祝いとしてJRパスの利用制限を強化し、外国人客を北陸新幹線とサンダーバードに誘導すれば輸送量は増えても殆ど収入は増えないのです。孫子三十六計には恐らくこのような計略があるはずですが、当ブログ主は不勉強なので分かりません。ちょっと締まりがよくありませんが、これぞ「白象の計」。

ついでに一言。この計略の影響で京都の観光収入が減少したりした場合にはリニアの京都誘致を巡って京都府と鞘当てのあった山田佳臣JR東海会長の出番です。「ああそうですか、ということだけ」

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2014年9月 3日 (水)

東海道・山陽新幹線の運賃の分配比率表

JR6社間を旅客が移動する場合は運賃及び特急料金は各社の営業キロの比率に従って分配される、と当ブログ主は「鉄道の未来予想図」P75〜(土屋武之)で分かりました。そこで、東海道・山陽新幹線の主要区間におけるJR東海と西日本の分配比率と実際の分配状況を表にしてみます。なお、小倉や博多絡みの区間については岩徳線経由の運賃計算キロを基に計算しています。
(09/19追記)
東京〜福井を加えました。

分配比率
東海 西日本
東京〜新神戸589.5km 93.7%(552.6km) 6.3%(36.9km)
東京〜岡山732.9km 75.4%(552.6km) 24.6%(180.3km)
東京〜広島894.2km 61.8%(552.6km) 38.2%(341.6km)
東京〜小倉1112.1km 49.7%(552.6km) 50.3%(559.5km)
東京〜博多1179.3km 46.9%(552.6km) 53.1%(626.7km)
東京〜福井545.8km 81.7%(445.9km) 18.3%(99.9km)(米原回りで計算)

名古屋〜博多813.3km 22.9%(186.6km) 77.1%(626.7km)
京都〜博多665.7km 5.9%(39.0km) 94.1%(626.7km)

分配状況(今年度のぞみ料金、東京〜福井間は東海道新幹線のぞみの特急料金を適用と仮定)
東海 西日本
東京〜新神戸15,100円 14,149円 951円
東京〜岡山17,340円 13,074円 4,266円
東京〜広島19,080円 11,792円 7,288円
東京〜小倉22,310円 11,088円 11,222円
東京〜博多22,950円 10,764円 12,186円
東京〜福井14,450円 11,806円 2,644円

名古屋〜博多18,540円 4,245円 14,295円
京都〜博多16,060円 948円 15,112円

参考資料(同上)
東京〜名古屋11,090円
東京〜京都13,910円
東京〜新大阪14,450円

こうしてみると、JR東海は山陽新幹線乗り入れで大損をしている、ともさほど損はしていない、ともどちらとも言えます。東京〜博多間であっても東京〜名古屋間より少し少ないくらいの収入があるため、このように両論併記の余地があります。
(09/19追記)
東京から北陸に乗客を輸送するより従来通り京阪神輸送に力を入れた方がJR東海としては儲かる、いや、北陸新幹線直通で東海道新幹線のダイヤが乱れやすくなることを考えれば「骨折り損のくたびれ儲け」以下、京阪神輸送に回す座席が更に減ることも見越せばJR東海にとって北陸新幹線建設はメリットが皆無とも言えるかもしれません。

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2014年8月 3日 (日)

「"真実も事実も書いた験しがない"とはいかなる空想に基づくものか。

例えば、以下の拙稿のどこを探しても真実も事実もないと断じられるのか。

"JR東海は、品川・名古屋間で約五兆円、大阪までは約九兆円の工事費用になるとしている。
JR東海は東海道新幹線というドル箱路線を持ち、二一一年度も一三億円の純利益を出した優良企業だが、いっぽうで現在三兆円の負債を抱えている。民営化後に東海道新幹線を買い取った二兆円が大きな負担だが、いまその借金を年利六%台というカードローン並の高い金利で六年間に渡って返している最中だ。東海道新幹線改修もこれから一兆円かかる。いくら儲かっているからといっても、そんなに資金をかけて大丈夫なのかと心配になる。株式市場は正直でこの計画を発表した時には、JR東海の株価はドーンと下がった。財政的にみてもリニア新幹線は無理ではないかと思う。"(「危ないリニア新幹線」P31 リニア・市民ネット編著 緑風出版 2013年7月30日発行)

"JR東海の財務状況は大丈夫?
(中略)実は現状でもJR東海は厳しい経営を行っています。一二年三月期の連結キャッシュフロー計算書を見ますと、同社は年間に東海道新幹線の購入費用に一四三三億円、その他の長期債務の返済に一二九四億円、社債の償還に八四億円と、いわゆる借金の返済に三五三一億円を費やしました。さきほどの経常利益の二六三八億円と比べると八九三億円の不足です。不足分を補いつつ、新たな投資を行うため、JR東海は新たに一一四七億円の長期借り入れを行い、六億円の社債を発行しました。リニア新幹線の建設に備え、JR東海はいま抱えている借金を懸命に返しているとも言えますが、無理はいつまで続くでしょうか。"(週刊金曜日906(2012年8月3日)号P25)

何事においても事実を直視する姿勢は大事にしたいものである。」

このような一文を鉄道ジャーナリスト梅原淳氏が世に出されることがあるのでしょうか?当ブログとしては出して頂いた方が色々な意味で助かるのですが。

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2014年7月16日 (水)

運輸白書から東海道新幹線のデータを見る

「東海道新幹線 座席利用率」で検索していたら

運輸白書
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/index_.htm

運輸白書のサイトを見つけました。そこで、取れる限り東海道新幹線のデータを取りました。(旅客輸送密度は当ブログ主が旅客輸送人キロ÷552.6km(東海道新幹線営業キロ)÷365日(67年度のみ366日)で計算)(座席利用率は68年度と69年度のみ記載あり)

座席利用率(%) 旅客輸送人員(百万人) 旅客輸送人キロ(億人キロ・百万人キロ) 旅客輸送密度(人)

65(昭和40)年度 データなし 31 107(106.51) 52,806
66(昭和41)年度 データなし 44 145(144.89) 71,834
67(昭和42)年度 データなし 55 179(179.11) 88,558
68(昭和43)年度 77.5 66 210(210.27) 104,249
69(昭和44)年度 69.2 72 228(228.26) 113,168
70(昭和45)年度 データなし 85 279(278.90) 138,275
09(平成21)年度 55.6 138 427(426.85) 211,627

71年度以降も新幹線のデータはありますが、東海道・山陽新幹線を一体として扱っているので「東海道新幹線のみ」の情報は取れませんでした。当ブログ主が知る限り、そしておそらくは東海道新幹線史上最低の座席利用率を記録している09年度のデータも載せました。

09年度の座席利用率を68年度と比べると−21.9パーセントになっていますが、その他の指標は全て09年度が68年度の倍以上になっています。68年度と69年度の比較でも座席利用率以外は69年度が上回っていますし、全くもう、どこから「座席利用率」を輸送実績を示す最有力の指標として使おうという発想が出てきたのか、私には理解に苦しみます。いや、今となっては理解できません。

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2014年6月 9日 (月)

JR東海解体案=JR西日本救済案 :在来線→東日本、新幹線→西日本

かつて当ブログにこのような記事を上げました。

JR東海再編案:豊橋以下西は西日本に譲渡せよ
http://app.f.m-cocolog.jp/t/typecast/1525029/1537329/88900849

ほぼ1年前、去年の6月10日に書いた記事ですが、あれから1年、考えがタイトル通りに変わりました。
在来線は全てJR東日本に譲渡、東海道新幹線はJR西日本に譲渡し、JR東海という会社そのものを解体して本州だけでもJR再編を行います。

この案の問題点は多々あるでしょうが、今私が自ら指摘できるのは
①在来線が全てJR東日本だと名古屋地区の運営がやりづらいのではないか?
②前の記事では東海道の津波の危険、津波そのものとJR東日本に東海道の運営を任せることの危険性に言及していたが、なぜ逆の提案をするのか?
この2点くらいです。

①については、名古屋は東京と大阪、いずれとの結びつきが強いかといえば間違いなく東京なので、尾鷲や熊野市の紀勢本線をJR東日本が管理することになってもそれほど問題にはならないと楽観します。
②ですが、この案だと静岡県のJRは在来線が東日本、新幹線が西日本になります。
会社間の連携の悪さはあちこちで指摘されていますが、静岡県には東海道新幹線のみならず新旧東名高速や東海道本線など日本の大動脈が走っており、何より日本の国道1号線がある地域なのです。
そのような地域の災害対策はJRだけでなく静岡県、そして国が一体となって立案すべきです。
裏を返せば、JRの縄張り争いも調整できない体制しか築けない日本であれば、地震津波と共に大動脈が沈むのも自業自得ということです。

ここまでしなければ、もはやJR西日本の経営基盤の弱さは改善されないのではないか、と断じて筆を置きます。

(06/19追記)
別の視点で見ると、この案はよい、と改めて実感できます。

JR東日本には在来線だけ、JR西日本に東海道新幹線が移るのであれば東日本にとっていい話とは言えません。
しかし、東日本のお家芸エキナカを展開できる権利をJR東海から丸々譲り受けたとしたら?
東海のランドマーク、セントラルタワーは勿論、静岡・浜松・岐阜…と東海地方の関連事業が東日本のものになったら?
東日本にとっても悪い話ではないでしょう。

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2014年4月21日 (月)

free rider:(synonym)Japan rail pass user "What's your problem?"

JR東海で使用される英和辞書にはそのように載っているのでしょう。

ジャパンレールパス(以下JRパス、大人普通席)は今日現在、
7日間:29,110円
14日間:46,390円
21日間:59,350円
で販売されています。
のぞみで東京〜新大阪間(片道指定席)は14,450円、つまり7日間用パスでも東京〜新大阪間を1往復すれば殆ど回収できます(往復だと28,900円)。さすがに元を取るまではいきませんが、東海道新幹線で2往復すればかなり利用者はお得になります。
ただし、事業者側としては大損と映ります。2往復で57,800円入って来るはずが29,110円にしかなりません。
しかも、29,110円であってもJR東海に全額入ってくることはまずありません。当ブログ主はJRパスがJR各社でどのように収益配分が行われているのか分かりませんが、やはりJR一社だけが総取りできる仕組みがあるとは考えられません。これではJR東海がのぞみをJRパスに解禁しようという気にはならないでしょう。
ですが、東北新幹線の場合東京〜新青森間は片道指定席16,840円、往復で33,680円。7日間用なら1往復で元を取れます。

なぜJRパスではやぶさには乗れてのぞみには乗れないのか、もはや通勤電車とも言われつつある東海道新幹線の圧倒的な利用状況が影響しているのではないでしょうか。現時点での東海道新幹線は国内の乗客だけで莫大な利益を上げています。
そして海外からの観光客は東北より京都に向かう流れがはるかに大きいです。この流れを収益に生かせないどころか、200円か300円程度の特別料金(追加案)では埋められない損失が出ます。JRパス利用者は乗せれば乗せるほど損になる構図を前にしてなお、JR東海が「そうだ、(東京から)京都に行こう」と外国人に言えるでしょうか。

結局JRパスでのぞみに乗せないのは、現状でのJR東海の経営戦術としてはどうやら正しいようです。
もっとも、人口減が深刻になる近未来においてものぞみ利用禁止を続ける余裕があるかは分かりません。

それにしても、なぜみずほにも乗れないんでしょうか?
はやぶさやはやてと同じように外国人観光客は極端な話、客寄せパンダとみなして損失は国内の利用客増加で補うという発想は日の目を見なかったんでしょうか?いや、そもそもJR東日本がそこまで考慮して新幹線にもJRパスで乗れるようにしているのか、単に外国人の利用者が少ない為それほど損失にならないと踏んでいるだけかもしれません。
そうだとすると、なおさらみずほが利用できない理由が思い付きません。山陽・九州の外国人客の利用状況は東海道よりもJR東日本の新幹線群が近いはずで、東海道ほど大きな減収要因になっているとは考えられません。分かりやすい「答え」としては「東海道・山陽新幹線の慣習として、最速の看板列車にフリーライダー(?)は乗せない」という惰性による判断を九州新幹線にも適用した、となりますか。

余談ですが、JR東海に外国人利用客の利便性を考慮せよとの声が国内外から強まった場合、どのような対案を取るか一つ思い付きました。

"京都名古屋レールパス"(外国人向け)
7日間:2万2千円台
14日間・21日間用パス:販売しない
(JR東海の全線(のぞみも)利用可能。JR東日本・西日本・東京モノレール利用の際は別途料金が必要)

これでJR東海は身銭を切って観光立国・日本に貢献できます。
もっと身を削れというのであれば、京急とJR西日本を京都パスで利用可能にしておけば他社への収益配分はそれほど必要にはなりません。

(06/21追記)
JR東海がJRパス安楽死を加速させるなら、を考えた場合一番効果があるのはひかりも利用不可能にすることです。ひかりも利用不可能になればJR西日本や九州も追随し、

「のぞみ・ひかり・みずほ・一部のさくらは利用できません」

となるのはほぼ間違いありません。
JR九州は九州内のさくらは海外客向けに利用可能のままにしたいでしょうが、みずほが利用不可能な現状を見る限り山陽新幹線直通のさくらは西日本に押し切られる可能性が意外と高そうです。
ここまで魅力を削がれたJRパスを利用する外国人がどれくらいいるか、楽しみにしてみたい気もしますがさすがに観光立国・日本を阻害するとして政府も抗議するかもしれません。

(09/03追記)
タイトルだけ英語にしました。"What's your problem?"はそのまま「なんか文句あんのか?」で結構です。
鉄道ジャーナリスト梅原淳さんの青春18きっぷのJR各社への収益配分に関する考察

青春18きっぷから見たJR旅客会社の現状
http://blog.umehara-train.com/?guid=ON&eid=388912

を基に、JR各社が輸送人キロに従ってJRパスの収益(2014年4月現在で大人普通席7日用29,110円→日割り計算で4,158円)を分配しているものと仮定します(他3つの配分法は本社三社のいずれかに不満が出るため除外)。

北海道 1.8% 75円
東日本 51.7% 2,150円
東海 20.8% 865円
西日本 21.7% 902円
四国 0.6% 25円
九州 34% 141円

いくら「外国人観光客を誘致するため」という大義名分があっても、商売としてはアホらしくてやってられません。ただし、JR東海以外は「イールドマネジメント」ですか?空席が埋まればええわい、という考え方もできます。JR東日本もそれでJRパスを新幹線利用可能にしているのでしょう。
しかしJR東海の場合、大黒柱の東海道新幹線の座席利用率が63.5%(13年度)とはいえ、それは16両編成がオーバースペックなこだまを含んでの話。真の大黒柱のぞみは飛び乗り対策として乗車率を90%台にはしておけないと想定すれば、現状の60%前半は「空席が4割弱ある」のではなく「JR東海流の需要コントロール」の成果なのかも知れません。
そののぞみは、山陽新幹線への直通需要でも片道1回の利用につき1万円台をJR東海にもたらします。

東海道・山陽新幹線の運賃の分配比率表
http://app.f.m-cocolog.jp/t/typecast/1525029/1537329/95934489

そんな中、JRパスユーザーは1日1回片道だけの新幹線乗車であっても、JR東海には千円もくれないのです。それは他社も同じことですが、在来線に収入の柱を持たないJR東海にとって東京から新大阪まで新幹線ひかりに乗せてもJRパスで僅か「865円」の収入は東日本はもちろん関西圏を抱える西日本以上に実入りが少なく感じられることでしょう。こうしてみると、JR東海が「JRパスは当社にとっては好ましくない商品」と公式に言明していない(ですよね?)のは非常に我慢強いこっちゃなぁ、と感嘆します。当然、「JRパスは殆ど当社の収入にならないのでのぞみ利用解禁など考えられません」「ひかりのJRパス利用禁止も検討すべきかと存じます」とはおくびにも出さないことが前提になります。
これを踏まえた新たなJR東海のJRパス無力化策はひかりの乗車禁止よりは

"京都名古屋レールパス"(外国人向け)
7日間:10,500円台(1日1,500円JR東海の収入になる)
14日間・21日間用パス:販売しない
(JR東海の全線(のぞみも)利用可能。JR東日本・西日本・東京モノレール利用の際に別途料金は必要なし)

こちらの方が効果は高いとみます。11,000円か12,000円台にすれば、東日本や西日本にいくらか配分しても1,400円くらいは手元に残るでしょう。

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