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2016年4月 1日 (金)

「国鉄の債務は償還が終わっているのではないか」

梅原淳「最新 新幹線事情」(2016年3月)より
(一部改変あり)

P251~建設費は誰が負担するのか

"(前略)新幹線の建設を担当する鉄道・運輸機構によると、JR東日本、JR東海、JR西日本の3社から毎年徴収している新幹線譲渡代金のうち724億円を事業資金として建設勘定に繰り入れているという。事業資金とは直接建設費に充当されるものではなく、債務の償還であるとか債務によって生じる利子の支払いに充当するのだそうだ。何とも理解しづらいが、新幹線の建設に当たって鉄道・運輸機構は民間の金融機関などから借り入れを行うのであるから、事実上建設費であると筆者(梅原淳)は解釈する。誤っていたらご指摘いただきたい。
(中略)筆者の私見であることを断ったうえで、国鉄の長期債務の処理と整備新幹線の建設費についての別の見方を示したい。それは、国鉄の長期債務はことによると償還が終わっているのではないかという疑問である。
国鉄が抱えた長期債務の多くは大蔵省や郵政省から借り入れたものだ。極論ではあるが、要するに国の資金を右から左へ動かしただけにすぎない。しかし、国鉄が債務を抱えたことは間違いないので帳簿上はどんどん膨れ上がっていった。長期債務が全く存在しないとは言わないものの、果たして分割民営化時に25兆1000億円もあったのかどうかは何とも言えない。
もう一つは国鉄の抱えた長期債務の中身である。過剰な人員を抱え込んだことなどによる非合理的な経営による赤字とよく言われているが、そうではない。ならば地方のローカル線か、はたまたトラック輸送に完全に押された貨物輸送かと言うとこれも違う。
国鉄の抱えた長期債務のうちの最も大きな割合をしめたのは幹線や大都市の通勤路線への設備投資、そして新幹線の建設であった。鉄道のなかで国民にとって最も必要な部分を整備するために国鉄は多額の債務を背負い、そして消滅したのである。もし1970年代に国鉄の設備投資が国の予算によってまかなわれていればこのような事態は招かなかったはずだ。
こう言うと国会で野党が反対したからだという人が現れる。だが、実情は全く違う。1970年代後半に国鉄の赤字が問題となったとき、日本社会党や日本共産党は国の予算で処理すべきと主張した。しかし、時の与党である自由民主党によって構成された内閣はその主張を退ける。国鉄の債務は受益者、つまり利用者や便益を受ける地方が負担すべきであると。
その後の経過はご存じのとおりである。筆者は別に日本社会党や日本共産党を支持するつもりも、自由民主党を非難するつもりもない。だが、現在国が実施している国鉄の長期債務の処理方法を見ると、皮肉としか言いようがないし、時機を誤ると21世紀のいまにまで問題を長引かせることがよくわかる。
以上を踏まえたうえで、そうは言っても国庫に金はないのであろう。実を言うと筆者は国鉄の長期債務の償還を遅らせても整備新幹線を先につくったほうがよいと考える。そして、JR3社が鉄道・運輸機構に支払っている新幹線の譲渡代金を整備新幹線の建設費に充当することも賛成だ。むしろ、その金額を増やしてもよい。
理由はいままで説明したとおり。国鉄の長期債務の実態がよくわからないので、思い切って償還を後回しにしてしまえという乱暴なものだ。なぜなら、整備新幹線の建設が遅れた分、失われる利益が大きいからだ。
整備新幹線の開業により、沿線と首都圏または京阪神圏との間ですべての交通期間を合わせた移動者数はおおむね15%前後の増加となっている。言うまでもなく新幹線の増加は15%よりも高いいっぽう、航空機などの減少分を補っての数値であるから立派なものだ。ともあれ従来と比べて15%前後も多く人が移動するのである。このような効果が得られると見込まれる区間には積極的に新幹線を整備したほうがよい。経済の発展に伴う税収の増加も見込める。(後略)"

梅原さん独特の見解かなぁと私は思いますが、断言はできません。仮に上記の発言を鉄道に対する見解が近いと思われている福井義高教授にそのまま行ったら、お互いに事実認識の深い隔たりに愕然としそうではあります。

ひとまず、鉄道ジャーナリスト梅原淳の金言紹介は今回で終わります。金言というわりにやたらと長かったですが。

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安心してください!

「大まかな計算では東海道新幹線の東京─新大阪間を16両編成の列車が片道走行すると1万8000キロワット時の電力を消費する。
─中略─
 東海道新幹線の1本の列車には1323人が乗車可能だから、1人当たりの電力消費量は13・6キロワット時にまで下がっていく。13・6キロワット時とは1360ワットの電気機器を1時間使用したときの電力消費量を指す。」
(「最新 新幹線事情」梅原淳著2016年3月刊平凡社新書203~204頁)
著者も編集者も

相変わらずですよ!

投稿: 陸 壱玖 | 2016年4月12日 (火) 12時33分

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